奥美濃サイクリング
奥美濃最後の秘境・ドウの天井

ドウの天井の三角点にて。
※写真はクリックすると拡大できるものがあります。(容量に注意!)

日時:2000年11月12日(日)
パーティ:パーティ:四方(CL)、榎本、山田き、石川、宮島、大森


 奥美濃のそのまた奥、「ドウの天井」と呼ばれる山がある。
 地形図を見ても名前は乗っていない。しかし屏風山や左門岳、能郷白山等から見ると、堂々とした立派な山だ。2万5千分の1の地形図「下大須」の上の端にある1332.7mの三角点ピークがそれだ。
 ドウの天井は奥美濃の山深い奥にあって、登山道もなかったため簡単には近づくことすら出来ない山だった。僕は二十数年来奥美濃の山を歩いてきているが、いつか行きたいけど、なかなか行けない憧れの山の一つがドウの天井だった。
 数年前、偶然に大須へ行くことがあった。その時に上大須にダムが出来ているのを見て仰天した。ダム湖の畔には東屋と案内があって、山の上に「川浦ダム」が建設中であることを知った。この時は、ダムの工事道路を使えば、以外と簡単にドウの天井まで辿り着くことができるかも知れないと思っただけだった。
 しかし、今年、インターネットでドウの天井の直ぐ下まで道路が出来たことを知った。しかも完全舗装の道路だ。舗装道路を何時間も歩くのは嫌だ。でも、ドウの天井には行きたい。そこで考えついたのが自転車だった。地図を見ると登りは結構きつそうだが、下りは絶対に速い。
 そんなわけで、数年前には思っても見なかった、「ドウの天井サイクリング」が実現することとなったのだ。しかし、当然望むべきツアーの姿ではない。奥美濃の秘境が破壊された哀れな姿を確かめに行くのが目的だ。情けなくも悲しいツアーだ。


ドウの天井からのパノラマ。
左端が左門岳、直ぐ手前に明神山があるのだが、重なって良く分からない。
右の方の雲の中が御岳だ。


 前夜に上大須ダムの東屋まで車で入った。奥美濃の山の話や自転車の話をして、寝るのが遅くなってしまった。でも、自転車なら大した行程ではないだろうと、高をくくって、朝はゆっくり出ることにした。今回は全員マウンテンバイクだ。ギヤ比の大きなバイクだから登りも大丈夫だろう。

11月12日(日) 晴れのち曇り
 天気予報では曇りのち雨。昼過ぎには雨が降り出すとのことだった。
 先週もそんな予報だったが、快晴になった。今回も晴れるだろうと、晴れ男が頑張る。結局下山後に一時時雨かけたものの、数滴の雨粒を感じただけで、登山中は晴れ又は曇のまあまあの天気だった。

 11月の奥美濃の朝はやはりもう寒かった。
 温かいスープを作って朝食を済ませ、思い思いに自転車にまたがる。東屋から少し戻ったところが川浦ダムへの「管理道路」だ。ゲートを乗り越え、バイクを渡していよいよスタートだ。
 道路は直ぐに結構な登りになる。でも寒いので、登りは体が温まるから歓迎だ。
 平均斜度10%にもなる舗装路を2時間半かけて登った。途中で足が足りなくなって自転車を押して歩く者もいてペースは極めてゆっくりだ。時期は晩秋。奥美濃の低山は今が紅葉の一番の時期だ。錦に染め上げられた山々を眺めながらゆっくり登った。
 傾斜がきつい分、邪魔者が無くて景色は良い。登っていくとおなじみの山々が姿を現してきた。この道路は奥美濃の展望台としても恰好だった。
 上大須ダムの対岸の尾根の上からまず、屏風山が顔を出してきた。双耳峰の目立つ山だ。続いて西に能郷白山がゆったりと大きい。北へ回り込むと明神山を従えた左門岳が現れた。その他に延々と九頭竜付近の山並みが続くが、この辺りになるとさすがに分からない。
 途中で猿の大群に出会った。偶然、トラックが上がってきたので、猿はトラックに追い散らされてしまったが。そう言えば、道路に点々と動物の糞が落ちていて、
「何の動物だろう」と、話しながら登っていたところだった。
 その暫く後では、キジの群がいた。あんなに沢山の雉にあったのも初めてだ。奥美濃の山奥にはこんなに豊かな自然が残っているのだ。いや、残っていたのだ(!?)
 奥美濃の山々と紅葉を楽しみながら、ついにドウの天井の真下まで着いた。そこには駐車場があり、なんと山頂に向かって真新しい階段とピカピカ光るステンレスの手摺りがあるではないか。階段があるとは聞いていたが、こんなものだとは思っていなかった。
 しかしこれだけの設備が「立入禁止」の山の奥の奥にあるのだ。
 登りは、ドウの天井に直行したので、川浦ダムは見ていなかった。まだ、ダム湖と「遊歩道」があるはずなのだ。
 ともかく、階段の下にバイクを止めて、三角点目指して階段を登った。一人はバイクを担いで登りった。辿り着いた三角点の標識は年を経た古い石柱だったが、その周りをぐるっとコンクリート製の贋物の丸太に囲われて、何とも居心地が悪そうだった。どう考えてもこれらの工作物は奥美濃には似合わない。名古屋の東山動物園当たりがお似合いだろう。
 ドウの天井の三角点は素晴らしい展望台だった。以前は雑木林の中だったのだろうが、今は全て刈り払われて360°の展望が意のままだ。御岳、乗鞍は残念ながら雲の中だった。しかし、どこまでも連なる山並みは奥美濃の山深さを感じさせてくれた。 写真を撮ったり、食事をしたり、暫く三角点で遊んで、今度は川浦ダムへ向かった。

 途中で上池ダムの工事現場も見学した。美しかったであろう山は無惨に削られ、木を切られ、痛々しかった。小川も水は枯れ、無骨な樹脂のパイプが付き出しているばかりだ。

 ドウの天井からはもう殆ど登りはない。林道を快調に下る。三つ目の橋の手前に遊歩道の案内板が出ていた。ここからダム湖に沿って幅1m程の遊歩道が続く。落ち葉が散り敷いて、美しい紅葉の中へと続く道だ。しかし、ここも完全舗装だ。そしてコンクリートの贋物丸太とステンレスの鎖がず〜っと付いていた。岩壁を削って無理矢理作った遊歩道には所々岩の塊が落ちている。散り敷いた落ち葉の中に突然落石が現れて、慌てたりするが、ただの舗装路を行くよりは楽しい。この遊歩道も何年持つのだろうか。
 ダム湖に沿って遊歩道は半周ほど続いていた。その先はまた林道になって川浦ダムに続くのだ。
 川浦ダムのダム湖は予想していたのよりかなり小さく見えた。これでは発電のための水量を確保できないはずだと、妙に納得してしまった。因みにこのダムは下の上大須ダムと二つのダムを繋いで、昼間は川浦ダムの水で発電をし、夜は他の発電所から電気を貰って上大須ダムの水を川浦ダムに汲み上げるシステムだ。揚水発電という名前の自然破壊発電システムなのだ。
 誰も来ない山のてっぺんに、近代的なダムがあると言うのは相当に不気味だが、立派な舗装道路とか階段、展望台、遊歩道等もやはり不気味と言うしかない。川浦ダムを見学して、遊歩道の入り口まで戻ることにした。途中にはトンネルがあるが、照明がない。距離は短いが真っ暗なトンネルを走るのは怖かった。
 遊歩道の入り口まで戻って、川浦ダム湖の一週を果たした。あとは上大須ダムまでのダウンヒルだ。完全舗装の広い道路で、前から車はまず来ない。カーブミラーを一応は確認しながらだが、道幅を一杯に使って駆け下った、爽快なダウンヒルであった。2時間半掛かった登りだが、下りはたったの10分であった。
 やはり、自転車は速いと実感した。歩いて降りていたら、登りと変わらない位時間が掛かるのだ。

 心配された天気も何とか持った。予想通り時間に余裕があったので、上大須ダムの周回を兼ねて、流れ込みの二股の先を偵察したりした。

 バイクを車に積んで、数日前にオープンしたばかりの武芸川にある温泉に寄って帰名した。


いよいよスタート。
まだ元気が良い。


能郷白山が見えてきた。

1ヶ月前に登った屏風山も見えてきた。

これがドウの天井へ続く階段。

三角点は無惨な姿に!

上池ダムの工事現場。

川浦ダムの遊歩道。

遊歩道の終了点

これが幻の川浦ダム湖だ。

記:四方すすむ